ザッパ・セレクションと銘打ったものでは、必ずといっていいほど、取りあげられる人気作。メンバーはワン・サイズ・マザーズに、ゲストでブルース・ギタリストのジョニー・ギター・ワトソン、また、変名でキャプテン・ビーフハートが参加している。

まず、何はともあれ、「インカ・ローズ」である。アルバム冒頭を飾るこの曲は、名曲と誉れ高く、俗にプログレ・ザッパと呼ばれることもある、この時期の代表曲だ。(プログレ・ザッパという呼称に不服のあるファンもいることを、念のため、つけ加えておく。)ヴォーカル入りではあるが、インストものという印象が強いのは、楽曲が音楽として自立している証拠か。

途中、ザッパのギターソロがあるが、そのパートは74年の伝説ライブ、ヘルシンキ・コンサートのものが使われている。このような、ライブ音源をもとにスタジオで再構成するという手法は、後に『シーク・ヤブーティ』で全開することになる。

それにしても、ザッパのミス・マッチ・センスはたいしたものだ。サウンド・コラージュは、ザッパの十八番としてよく知られていることだが、このアルバムでは、そういった異質なものの組み合わせを、不自然さを感じさせずに、雑派ロックとして昇華させてるように思う。ごった煮感を感じさせないのだ。いろいろなテイスト、知的、壮大、優雅、気品、男気、猥雑、プログレ、ドアホ…などなどが、唯一無二のミクスチャー感覚によって、複雑的シンプルにまとめあげられている。ザッパの才気みなぎる一作といえるだろう。

肉体派音楽インテリの耳を満足させるであろう傑作。全ロック・ファン必聴!

同一のメンバーでおこなわれたライブ盤、『オン・ステージ2』が超オススメ。もの凄いウネリに呑み込まれること間違いなし。また、同じく、ワン・サイズ・マザーズ期の『オーヴァー・ナイト・センセイション』『アポストロフィ』『ロキシー&エルスホエア』『スタジオ・タン』もオススメ。
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ワン・サイズ・フィッツ・オールの曲名 アマゾン