ザッパ作品紹介/オーヴァーナイト・センセイション

タートル・マザーズ解散後、ビッグバンドを率いての傑作『ワカ/ジャワカ』『グランド・ワズー』を経たのちの、新生マザーズ「ワン・サイズ・マザーズ」の幕開けとなった作品。内容は全曲、歌もののコンパクトな曲で、わずか数分の中に、ザッパの万華鏡的ポップ・センスが開花した、記念碑的な作品といえるだろう。

もし、ファーストから年代順に聴いていったなら、そのサウンドの振幅の大きさに、さぞかし困惑するに違いない。豊潤なロック・サウンドとでも言えばいいのだろうか。あきらかに脱皮したザッパを感じ取れるはずだ。そして、このアルバムからザッパ自身がヴォーカルをとるようになった。

全体的には、ザッパのギターやジョージ・デュークのキーボード、シンセがネチッこく、ファンキー色が濃くなった。そこにホーン、女性コーラスが加わり、華やかで、贅沢感を感じさせる。

「50/50」は中盤のハイライトといえる曲で、ジョージ・デューク、ジャン・リュック・ポンティ、ザッパのソロの応酬が凄まじく、そこに、ゲスト・ヴォーカルのリッキー・ランチェローティが頑張ってしまうエキサイティングな曲。特に、終盤は、メンバー全員の総攻撃といわんばかりの盛り上がりを見せる。

ちなみに、ジャン・リュック・ポンティはフランスのジャズ・ヴァイオリニスト。本作以前では、『ホット・ラッツ』で客演していて、ザッパのプロデュースで、パシフィック・ジャズというレーベルから、『キング・コング』というアルバムも発表している。

それから、個人的に、特に好きなのは、5曲目の「ゾンビー・ウーフ」。ゾンビーをテーマにした歌詞と、目まぐるしくかわる曲調、刺激的な音の連続で、聴き手のイマジネイションをかきたてるユニークな曲だと思う。ザッパ・ロックの魅力がコンパクトに凝縮された、小品といえるだろう。

「最高傑作という言葉を無にするザッパ・ワールド」というのは常識だが、本作を聴くと、それを痛感する。これが、並のロック・バンドだったら、代表作に数えられても、おかしくない作品だ。いわゆるロック・ファンには聴きやすく、ザッパ入門には最適な作品といえるだろう。

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オーヴァーナイト・センセイションの曲名 アマゾン