ザッパ作品紹介/ワカ/ジャワカ

1971年12月10日、ロンドンのレインボー・シアターでステージに登ってきた男に襲われ、全治6ヵ月の重傷を負ったザッパの、復帰第一作目。フロー&エディは去り、残りのタートル・マザーズのメンバーとゲストで制作された。

音楽性は名作『ホット・ラッツ』の続編というだけあって、インスト主体のジャズ・ロック的作品となっている。全体的な印象としては、サウンドは大らかでなめらか。宇宙遊泳をしてるかの如き浮遊感を味わえ、無限の広がりとなめらかさでもって、アナザー・ワールドへ連れてってくれる。

特にそれを印象づけるのは、1曲目「ビッグ・スウィフティ」だ。大胆でスピーディなオープニングには、いつものことながらドキっとさせられる。そして、アドリブ部のゆったりとしたスピードと浮遊感は素晴らしく、各音が適切にレイアウトされ、至極絶品な音空間に身を委ねられる。

そして後半、テーマに戻ってくるところは、ザッパ音楽の中でも雄大さにかけてはピカイチといえ、大変美しい。絶妙なスピードとレイヤー感覚が素晴らしく、ここを待ち遠しく聴くのがいつも楽しみである。

余談だが、この曲を聴いていると、ザッパが自身の作曲について、現代美術の作家、コールダーのモビール(空中を動く彫刻)に例えていたことを思い出す。

2曲目「ユア・マウス」はニューオーリンズ色の濃い、聴きやすいヴォーカル曲。知らないで聴いたら、ザッパの曲だと思わないんじゃないだろうか。分かりやすい展開(サビがある)で、ザッパにしてはまとも(?)で、安心して聴ける曲だ。

3曲目「イット・ジャスト・マイト・ビー・ア・ワン・ショット・ディール」はカントリーとジャズが合体したような曲。砂くささとなめらかさが融合した心地良さが味わえる。ルーツ・ミュージック・ファンが好みそうなテイストなのだが、例の如く、途中数回、モンタージュ的に曲調がかわる。まるで、数分間のショート・ムービーでも観ているかのようでもある。ここらへんを聴いていると、ザッパって、雑派というだけあって、ホントに欲張りで退屈が嫌いな人なんだなと思ってしまう。

そして、はたまた間髪入れずに、電子室内楽の4曲目「ワカ/ジャワカ」へと繋がっていく。小気味よいテンポにトランペット、ミニ・ムーグ、ギターなど、ソロの持ち回りがあるのだが、パワー大放出というのとは違って、曲や構成といったものを大事にした演奏となっている。

ザッパのジャズ・ロックというと、真っ先に挙がるのは大抵『ホット・ラッツ』『グランド・ワズー』なのだが、こちらも素晴らしい作品。スリルと安息感が同居した作品なんて滅多にありませんぞ。個人的にリピート率高し。オススメ。

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ワカ/ジャワカの曲名 アマゾン