ザッパ作品紹介/ホット・ラッツ

ザッパのジャズ・ロック的作品のなかで、最も有名な作品。ソロ2作目として発売され、イギリスのメロディ・メーカー誌の人気投票では、レッド・ツェッペリンを押しのけ、見事、アルバム・オブ・ジ・イヤーの第1位に輝いた。

全編、インストゥルメンタルで、1曲だけ、前半部分、キャプテン・ビーフハートがヴォーカルをとる曲がある。全体的な印象としては、ジャジーでおおらか。特に、イアン・アンダーウッドの活躍は顕著で、キーボード類、サックス類をすべてこなす彼は、ザッパの右腕的存在。ザッパの絶大な信頼の下、緻密で壮大なサウンドを作り上げていく。

1曲目「ピーチズ・アン・レガリア」はザッパの代表曲。アシッド・ジャズの開祖などともいわれることのある、この曲で、ザッパに興味をもったという人も多いはず。重厚感とファニー感が合体した流麗なサウンドには、万人が驚くに違いない。「ザッパは不滅!」と叫びたくなる、朽ちることのない曲だ。

2曲目「ウィリー・ザ・ピンプ」は最もロック色の濃い曲。イントロのドン・シュガーケイン・ハリスのヴァイオリンにビーフハートのダミ声、そして、ザッパのギター・インプロヴィゼーションが延々と続く。安定感のあるフレージングで、じっくり聴けるソロだ。

3曲目「サン・オブ・ミスター・グリーン・ジーンズ」は個人的にお気に入りの曲。宇宙のアルプスを思わせる、透明感あるサウンド、アレンジに、ロック・ギター・サウンドがうまく調和した、傑作だ。最初は他の曲のパワー大放出に圧倒され、影に隠れがちだが、繰り返し聴く度に、じわじわと存在感を増してくるに違いない、快調な曲だ。

16分を越す5曲目、「ガンボ・ヴァリエーション」は、後半のハイライトといえる曲。各人のソロの持ち回しが、白熱する、スリリングなセッションだ。特にドン・シュガーケイン・ハリスのヴァイオリンは聞き物。泣き泣きの、ブルース・ヴァイオリンをたんまりと聞かせてくれる。

それと、バロック風の「リトル・アンブレラ」やフランスのバイオリニスト、ジャン・リュック・ポンティをフィーチャーした「イット・マスト・ビー・ア・キャメル」などの格調ある曲も見逃せない。このアルバムに風格をもたらしているのは、この2曲の存在感だろう。

ザッパ自身も「われながら妙に気に入ってしまった」と述べた本作はおそらく、ザッパ作品中、一番、安心して買える、また薦められる作品といえそうだ。この作品を気に入った人には、次に『ワカ・ジャワカ』『グランド・ワズー』をお薦めします。

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ホット・ラッツの曲名 アマゾン