オリジナル・レーベル:Straight(US),Straight/Reprise(UK)
※アメリカではBizarreからも少数発売された。
プロデューサー:Frank Zappa
エンジニア:Dick Kunk
録音時期:1969年3月/4月
録音場所:ホイットニー・スタジオ,エンセナーダ・ドライブ
発売:1969年7月(US),1969年11月(UK)
前人未踏、正真正銘の大傑作
レコード会社をフランク・ザッパが作ったストレート・レーベルに移籍し、ザッパのプロデュースで制作された。このアルバムではオリジナル・メンバーであった、アレックス・セント・クレアー(g)、ジェリー・ハンドリー(b)が抜け、代わりにビル・ハークルロード(g,fl)とマーク・ボストン(b)が加入。また数曲でビーフハートの従兄弟のヴィクター・ヘイドン(bcl)が参加している。ビーフハートはこのアルバムで各メンバーに、なんとも珍妙な芸名をつけた。それぞれ、ジョン・フレンチ(ds)はドランボ、ジェフ・コットン(g)はアンテナ・ジミー・シーメンス、ビル・ハークルロードはズート・ホーン・ロロ、マーク・ボストンはロケット・モートン、ヴィクター・ヘイドンはマスカラ・スネイクと生まれ変わり、衣装もビーフハートが考えたコーディネートに身を包むようになった。
このロック、ブルース、フリージャズなどの音楽要素が高度にミックスされた、彫刻的な音楽を創るにあたり、バンドは9ヶ月間、女・ドラッグなしの共同生活を送り、音楽を作り込んでいった。そして、このアルバムで特筆すべきことは、その作曲方法にあった。
まず、ビーフハートが共同生活の家に、これまで使ったこともないピアノを持ち込み、イマジーネションの赴くままに音の実験をする。それをジョン・フレンチが音楽的に翻訳し譜面化していくという前代未聞の作曲方法がとられた。アイデアはピアノではなく口笛で伝えられることもあったという。ジョン・フレンチは語る。「なにかの建物の土台を、一個ずつ大きさが違うレンガを積んで造っていくようなものだよ。最初の段(パート)が終わったら次の段を積み、全体がどうなるのか考えてみる。俺は、こんなことをさんざんやらされたんだ。」
また、オーネット・コールマンの『フリー・ジャズ』を聴いて感銘を受け、自分にも出来ると思い込みサックスを吹き始めた。ビーフハート以外のインプロヴィゼーションは一切禁止。譜面に基づいた各楽曲は、これしかあり得ないとでもいうかのような、緊張感がみなぎっている。
合宿生活でみっちり訓練したおかげで、レコーディングはほとんどがワンテイクでOK。リズム録り4時間、ボーカル録り2日、ミックスに1日の計4日ですべて完了したという。
商業的には、アメリカではヒットチャートにランクインしなかったが、イギリスでは第21位を記録した。