ZAPPAHEADZ TV
好きな音楽紹介や日記

QooSue 『Emaiq ‘a’ Soniax』(2012)

2014年3月23日 (日曜日)
Pocket

img-QooSue-emaiq

日本庭園のような間の美学が息づく、
オーガニックな絶景ミュージック!!

いまから1年半くらい前、偶然ライブを見て知ったQooSue(クースー)。そのライブの際、新鮮な感動をもらえたので、CDを買って帰ってきた。それからわたしの愛聴盤となり、ライブも何度か観に行っているQooSueの紹介をしたいと思う。

まずはわたしの感想の前に、彼ら自身が語る紹介文を転載しておこう。

2007年結成。 双子の兄弟である那須寛史(Gt.)那須健二(Ba.)を中心に、吹奏楽出身でありながらケルト音楽等、民族音楽に造詣の深い西村桂樹(Sax.reed.Key.)と共に世界観溢れる音楽を紡ぎだす、編成無形の音楽ユニット。ヴォーカル曲とインストゥルメンタル曲の垣根なく演奏される楽曲群はJazz, Funk, classical, hiphop, ambient, Latin, electronica, ROCK等を取り入れつつ、あくまでキャッチーな楽曲、オーガニックなサウンドのPOPSを構築している。

ルーツを一点に感じさせない音楽性。小編成でありながら全員が歌唱を含む複数楽器を操り紡ぐカラフルな演奏形態。意表を突く、斬新なアイデアに溢れた楽曲構築。

「バンド」でも「ユニット」でもない、『プログレッシブ小楽団』として、東京都内を中心に活動中。

わたしはそれに加えて、日本庭園のような間の美学を演奏から感じてしまう。日本人はシンプルなオブジェをさりげなく、その実考え抜かれた配置をするのが上手いと言われるけれど、QooSueの音楽にはそれと同種の美意識を感じてしまうのだ。メロディアスで印象的なフレーズを美しいオブジェと見立てると、それらが確固たる意志を持ってさりげなく配置されていく。曲の起伏は土地の起伏や築山のようにも感じられ、庭園作家さながらである。

また、大胆にキャッチーというのも特筆すべきことかと思う。例えば、歌川広重の浮世絵「亀戸梅屋敷」や「水道橋駿河台」の構図に見られるような大胆なキャッチーさと言ったら良いだろうか。そして豊潤な音空間の中に、ピシャリと均衡を保ちつつ、シームレスな音楽が展開されていく。どーんと掴んで、ピシャリと決める。このツボを外さぬ説得力の高さはQooSueの魅力といって良いだろう。

この作品は8曲入りの2nd miniアルバムで、インスト中心のものが6曲、歌ものが2曲となっている。

1曲目「Nah “c” Tag」は天気の良い日の朝一番に聴きたくなるような、爽快な曲。初めて聴いたとき、ギターのイントロとサックスの艶やかな音響が醸し出すスケール感にぐっときて、その後に出てくる掛け声の意表さに驚き、一瞬反射的に「この後、和太鼓でも鳴りだすのだろうか」と思いきや全くそんなことはなく、良い意味での肩すかしにあった。この後どうなるのだろうかという期待感が膨らんだこの時点で、このアルバムは買って正解だったと確信した。また「夢から覚めて、今、走り出す」とでもいうかのような、ポジティブな感触がするのが好ましい。そしてそれは「QooSue参上!」といった趣に感じとることもでき、まさにアルバムの冒頭を飾るにうってつけの曲と言えるだろう。

2曲目「Paradin」は、まるで地球に初めて植物が生えてきたかのような、瑞々しい生命感を感じさせる大変美しい曲。大地に初めて降り落ちる1滴のしずく。それがもとで植物が生まれてきたかのような神秘的な世界観を感じさせる。最後の盛り上がりは、1本の樹木から枝葉が何本も生え伸びてくるような幻想的でカラフルな世界観が浮かびあがってくる。環境破壊という言葉とはまったく無縁の世界を提示するこの曲は、ある意味地球ための音楽と言っても良いだろう。

3曲目「M.T.P.」は英詞の歌もので、陽光があたったような暖かい曲。ハロー・ミスター・サンシャインという歌詞が、わたしには太陽さんありがとうと言ってるように聞こえてくる。ベースの低音の温度感が心地よく、サックスソロはさっそうと街を駆け抜けていく感じでかっこいい。なんというか、街行く人々の間を誰にもぶつからずに空飛ぶベスパですり抜けて行くような感覚といえば良いだろうか。この曲も「Nah “c” Tag」と同様に、天気の良い日に聴きたくなる。

4曲目「Run On a Green Valley (STUDIO LIVE + “a” Ver.)」は探索とか冒険といった好奇心をくすぐる言葉が思い浮かぶ。わたしのイメージでは、ミクロ化した人間が日本庭園を探索して、いろいろな植物や昆虫に出くわしつつ、起伏のある庭園を歩いていくような感覚。物質の縮小技術で1時間だけ小さくなれる‪ミクロの決死圏‬という映画があったけれど、3分間というタイムリミットで幻想的な旅ができる楽しさと儚さと郷愁が渾然一体となった曲。子供時代の河原や野原で遊んだ記憶や感動をも思い出させてくれる。

5曲目「5 (STUDIO LIVE + “a” Ver.)」は鮮烈なギターで始まるインパクトのある曲。ハイライトとも言える瑞々しくも白熱した曲で、スタジオライブの生々しさと水のせせらぎの環境音が醸し出す清涼感の融合が面白い。まるで、尾形光琳の『紅白梅図屏風』の金地の背景部分に、アルプス天然水が繊細な小川のように流れ込んできて、軽やかな水しぶきがきらきら輝く中を、侍が刀を構えているみたいな曲だ。

6曲目「さざ波のワルツ」は心に沁み入る深いメロディーで、まるで、ハネムーンで夕日に照らされた浜辺にきているような気がしてくる。非常にゆっくりとしたスピードの曲なのだけれど、これが実に素晴らしく、夕日が沈むまでのわずかな時間が大切に真空パックされたかのようだ。この曲が提示するシンプルな美しさは、きっと老若男女の心を捉えて離さないだろう。

7曲目「はばたき」は歌ものの曲。積み重ねた想いが風となって吹きつけてくるといった内容の歌詞なのだけれど、聴いていると風に吹かれる樹々に自分を重ね合わせるような気になってくる。ギター、ベース、パーカッションで進行していくサウンドはほのぼのと暖かみがあるのだけれど、ティン・ホイッスルと鈴の音のひんやりとした透明感が醸し出す幻想性が重ねられているところが面白い。そしてエンディングのギターは、色とりどりの葉が風に織り込まれるかのようだ。

8曲目「追想の街で」は言葉にし難い深い郷愁を感じさせる不思議な曲。わたしはドアーズのセカンドアルバム『まぼろしの世界』のジャケを見ると、そこに出てくるあのサーカス団はいったいどこへ行ったのだろうかと思い浸るのだけれど、それに近い感触をうける。モノクロ映像を見た時に感じられるような深い思考や想像を促す曲ともいえるかもしれない。特に終盤の手拍子がだんだんと鳴り止んでいくところは深い余韻を残して印象的である。

どの曲にも言えることだけれど、退屈させない展開で聴き通してて飽きない。3分間という時間の中に封じ込められている情報量が大変多いという印象を持った。また、ある特定の音楽に対する趣味性の高さに起因する類型化に陥いることなく、自分たちの音楽を構築しているところは素晴らしい。そして、一つひとつの曲に「こんなのどうだ」というパワーがみなぎっている。

とりわけインスト曲の2「Paradin」は、自然と生命を感じさせミステリアスである。繰り返し聴くたびに第一印象以上のサムシングを聴き手に与えてくれることだろう。

普段はCDショップや書籍、Webなどで知ったアーティストを試しに買ってみるというパターンが多いけれど、こうした偶然観たライブがきっかけでファンになるというのは音楽好きとしては大きな快感。今後も目が離せない。ぜひとも注目していきたい。

Webショップはこちら(試聴あり)

↓YouTubeで見つけた「Paradin」のデモ演奏風景。完成版はアルバムで聴いてみてください!!

Pocket

         
この投稿は 2014年3月23日 日曜日 9:37 PM に ワールド・ミュージック, 日本のバンド カテゴリーに公開されました。 この投稿へのコメントは RSS 2.0 フィードで購読することができます。 コメントを残すか、ご自分のサイトからトラックバックすることができます。

コメントをどうぞ

2014年3月
« 6月   6月 »
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031