筆者独断、ザッパ入門はこれで決まり!

まずはジャズ・ロックの名盤『ホット・ラッツ』である。わたしがもし、直接誰かから「ザッパって何から聴けばいいの?」と相談を受けたとしたら、迷わずこの作品を薦めるだろう。ザッパの音楽はどれも個性的だから、聴きやすいといわれるロック作品でも、リスナーの元々の趣味趣向によっては受け入れられない恐れがある。つまりどんな傑作を薦めたとしても、常にそのようなリスクがつきまとうのである。

このようなことを考慮すると、まず最初に、「ザッパは凄い」「ザッパはセンスが良い」と思ってもらわなければ始まらない。何事も第一印象が大切である。

この作品はザッパ音楽の中では、特にザッパの個性を代表するようなアルバムではないかもしれぬが、大らかな雰囲気とスリリングな演奏で、真面目にバッチシ決めてくれた名作である。仮にジャズやジャズ・ロックに興味がなかった人でも、1曲目の「ピーチズ・エン・レガリア」を聴けば、「おっ、これはいい!」と思ってくれる可能性は大である。

そして『ホット・ラッツ』でザッパを好きになったら、いよいよザッパ・ロックが満開した作品に挑戦だ。

そこで、2番目は'73年発表の『オーヴァーナイト・センセイション』を選んでみた。'73年〜75年はザッパ・ロックが開花した重要な時期である。ジョージ・デュークやルース・アンダーウッドといった腕利きが在籍していたのもこの時期だ。この作品は全曲歌ものでコンパクトに仕上がっていて大変聴きやすい。そして、それでいて味も濃いという特上品だ。特にソロの応酬が熱い「50/50」のような曲は、まさにロック・ファン好みといえるだろう。

最後は80年代の作品から選んでみた。『ユー・アー・ホワット・ユー・イズ』はハード・ポップな傑作。特徴としては5分以内の曲がシームレスに繋がった見事な音絵巻だ。ジグソーパズルのように各曲がピタっとはまって、退屈せず聴きとおせるのが清々しい。この滑らかさはザッパ作品中随一ではなかろうか。また分厚いコーラスがエネルギッシュな、大変聴きやすいヴォーカル・アルバムでもある。

ただ唯一の欠点はジャケがダサいということか。ザッパの顔がアップされてるだけの、センスのないジャケット。わたしはこのジャケのお陰で、大分あとになって本作を手に入れた。その時、思った以上の出来だったので、もっと早く買っとくべきだったと後悔したほどだ。

以上、独断で3作品選んでみたが、もちろん、どういう経路で聴こうがみなさんの自由。『ホット・ラッツ』の次に同じジャズ・ロック路線の『グランド・ワズー』を聴いても良いし、『オーヴァーナイト・センセイション』ではなく『ワン・サイズ・フィッツ・オール』『シーク・ヤブーティ』を聴いたって構わない。みなさんの嗅覚で、ぜひともザッパ道を突き進んでみよう。

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