ザッパ作品紹介/バーント・ウィーニー・サンドウィッチ

本作と次作の『いたち野郎』オリジナル・マザーズの在庫処理アルバム。だが内容はすこぶる充実していて、聞き応えのある作品に仕上がっている。

最初と最後のドゥーワップの曲にサンドウィッチされるかたちで、バロック音楽やジャズ・ロック、キャバレー音楽などが渾然一体となった、優雅に美しいザッパ・ミュージックが繰り広げられる。ザッパの構成/編集センスは、いつものことながら卓越で、寄せ集め的アルバムなのに、作品全体が1曲であるかのような雰囲気さえ醸しだしている。

「ベルリンの休日」は優雅な滑稽さともいうべき美しさと、キャバレー風味にみちた曲で、このアルバムの印象の大部分を決定づける役割を果たしている。導入部は、のちに ロイヤル・フィルと共演した大作『200モーテルズ』でも使用され、そちらでは、フロー&エディのヴォーカルが加わったものを聴くことができる。

ハイライトといえる大作「俺が住んでいた小さな家」は現代音楽とロックががっぷり組んだエキサイティングなサウンドに、『ホット・ラッツ』でも活躍したシュガー・ケイン・ハリスのヴァイオリンが、これでもかという程、炸裂したホットな曲。イアン・アンダーウッドのピアノの導入部も「素晴らしい!」のひとこと。この曲も、のちに『フィルモア・イースト・ジュン1971』ではアルバム冒頭を飾り、タートル・マザーズ・ヴァージョンを聴くことができる。

ところで、ザッパは、各時期のバンドで、同一の曲を度々再演することがある。よくジャズで、「ジャズに名曲なし、名演あり」というが、ザッパ音楽の面白さのひとつにも、それがある。バンドとしてのアクの強さでは、何物にも代え難いオリジナル・マザーズの演奏の魅力が、本作を珠玉の作品たらしめていると思う。

個人的には、自分のザッパ遍歴はオリジナル・マザーズから始まったので、『アンクル・ミート』界隈ともいえる本作には、ひときわ郷愁を感じてしまう。次作の『いたち野郎』にくらべると聴きやすく、次作が危険牌なら、本作は安全牌といえるだろう。ゆったりと贅沢な時間をすごしたい方に、ぜひともオススメしたい作品。名作。

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バーント・ウィーニー・サンドウィッチの曲名 アマゾン