ザッパ作品紹介/スリープ・ダート

本来はボックス・セット『レザー』として発表されるはずだったもので、ザッパに許可なく発売されたもの。「レザー3部作」の2番目の作品で、ジャケットのアートワークはゲイリー・パンター。

CD版はLP版とは異なり、3曲、タナ・ハリス(女性)のヴォーカルが加えられている。また、同3曲で、チャド・ワッカーマンのドラムがオーヴァーダブ/追加されている。なお、変更前のテイクは、ボックス・セット『レザー』で聴くことができる。

内容は、他のザッパ作品と比べて、かなり風変わりな曲が収められている。

「フィルシー・ハビッツ」はザッパにしては珍しく、キング・クリムゾン風の重くヘヴィーな曲だし、「スリープ・ダート」も珍しくザッパがアコースティック・ギターを奏でる、ロマンチックな曲だ。また、ジャジーな演奏に女性ヴォーカルが乗った曲など、いずれも他の作品では聴けない傾向のものだ。

ザッパ、テリー・ボッジオ、パトリック・オハーンによる、13分のインスト曲「ジ・オーシャン・イズ・ジ・アルティミト・ソリューション」も、『ホット・ラッツ』『ワカ/ジャワカ』で聴けた音楽とは異なる、新地平を感じさせるプログレッシブ・ジャズ・ロックだ。

ただ、楽曲単位では面白い作品だが、アルバムとしてのまとまりには今一欠けると思う。

たいがい、ザッパのアルバムは多彩な楽曲が入っていても、ジグソーパズルのようにピタっとハマって、1枚のアルバムとしては不思議と魅力的に仕上がっているのだが、本作にはそのような編集マジックは感じられない。まあ、レコード会社が無許可で発売したものだから仕方がないかもしれないが。

あと、個人的好みだが、タナ・ハリスのカラっとした、声を張り上げるヴォーカルより、しっとりと艶のある女性ヴォーカルにして欲しかった。どうも演奏の質感と声質が合ってないように思う。

『ザッパ・イン・ニューヨーク』『シーク・ヤブーティ』の間に挟まれて存在感の薄い作品かもしれないが、ザッパの一面を知る上で、コレクションに欠くことの出来ない作品。ジャズ・ロック、プログレ好きにはオススメだ。

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スリープ・ダートの曲名 アマゾン