ザッパ作品紹介/ザッパ・イン・ニューヨーク

1976年、ニューヨークでのライブ。ゲストにブレッカー・ブラザーズ、その他ホーン隊を迎えてのゴージャス・ライブ。本来は『スタジオ・タン』『スリープ・ダート』『オーケストラル・フェイバリッツ』とともにボックス・セット『レザー』として発表されるはずだったもの。(『レザー』は96年に本来のかたちでCD化された。)CD化に際しては、イギリス初回盤のみに収録されていた「パンキーズ・ウィップ」と、ボーナス・トラック4曲が追加されたうえ、臨場感たっぷりのリミックスが施された強力ライブ盤。

ちなみにメンバーを挙げておくと、ザッパ、レイ・ホワイト、エディー・ジョブソン、パトリック・オハーン、テリー・ボジオ、ルース・アンダーウッド、デヴィッド・サミュエルズ、ルー・マリーニ、ロニー・キューバー、トム・マローン、ランディー・ブレッカー、マイク・ブレッカー。それにソフィスティケイディッド・ナレーションで、ドン・パルド。

内容的には、ザッパ流フュージョンの真骨頂ともいうべきもので、新旧の曲が新たなアレンジを施され、絢爛豪華たる演奏が繰り広げられる。

1曲目「おっぱいとビール」は、アメリカ人は「おっぱいとビール」が好きだということがモチーフになった曲で、ザッパの歌に始まり、その後、テリーとの掛け合い漫才のようになっていく。オープニングはこれから盛り上がるショーのウォーミング・アップといったところ。

だが2曲目「クルージング・フォー・バーガーズ」ではいっきに第一峠ともいうべき駆けあがりを見せる。グチョグチョ、グニャグニャなロマンチシズムとでもいえばいいか。演奏は、腸の蠕動(ぜんどう)運動の如き様相を呈し、あたり一面をピンク色に染め上げる。そこにザッパのギター・インプロが延々続くのだが、聴いてるとなんだか体内を探検しているような気がしてくる。

そして、3曲目で少し和んだあと、前半の目玉、ドラムのテリー・ボジオがヴォーカルをとる4曲目「パンキーズ・ウィップス」に突入。この曲は、ハード・ロック・バンド“エンジェル”のリード・ギタリスト、パンキー・メドウズの唇に、テリーが性的妄想をかきたてられるという物語の歌。馬鹿馬鹿しい歌詞と高度な演奏というスタイルを、存分に楽しめるドラマチックな曲だ。

上記以外にも、ドラマーの悪夢ともいわれる難曲「ブラック・ペイジ」や、オハーン、ブレッカー兄弟のソロが堪能できる「ザ・パープル・ラグーン/アプロクシメイト」なども聴きどころ。また、「アイム・ザ・スライム」「パウンド・フォー・ア・ブラウン」「ソファ」といったおなじみの曲も、新たな彩りを与えられ蘇る。ザッパ道では避けては通れぬ傑作ライブ。

本作を気に入った人には、翌年の同じくニューヨークでのライブを収めた映画『ベイビー・スネイクス』のサントラCD&DVDをオススメします。

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ザッパ・イン・ニューヨークの曲名 アマゾン