ザッパ作品紹介/ウィー・アー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マニー

『ウィー・アー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マニー』、直訳すると、「俺たちは金のためだけにやっている」。内ジャケでは、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のパロディをやっている。

それが、また、こきたないんだ。ボロい格好したマザーズの足下には、腐った野菜やゴミが並べられ、他の人物はジミヘンを除いて、コラージュという代物。ちなみに、デザイナーは、ザッパ作品のアート・ワークを多く手がけた、カル・シェンケル。この仕事が、ザッパとの初仕事だったようだ。

ところで、本作と『サージェント・ペパーズ』の関係には、有名ないわくがある。前作『アブソリュートリー・フリー』の音源を、発売前、歌詞問題紛糾中に、ビートルズが手に入れ、それが、『サージェント・ペパーズ』制作の大きなヒントになった、といわれているのだ。そして『サージェント・ペパーズ』は世界初のコンセプト・アルバムという評価を得ることになる。

そういう因果で、マザーズは本作で、『サージェント・ペパーズ』のパロディをやっている。もちろん、タイトルには、「ビートルズは金のために音楽をやっている」というメッセージが含まれていると考えられる。

音楽的な話にうつると、一緒に口ずさめそうな歌を主軸に、様々な音素材が織りなす、マザーズ流ポップ・ミュージックといえるだろう。語りや具体音、大胆なサウンド・エフェクトが、卓越した編集感覚、コラージュ感覚によって、一枚の音絵巻へと変身しているのである。そして、それが、甘すぎず、カラフルで、大変うつくしい。特に、嘲笑の嵐の最終曲の余韻は、至宝の美しさだと思う。

ザッパの構成感覚が、遺憾なく発揮された、初期の重要作品。コレクションに欠かすことのできない一枚。

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ウィー・アー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マニーの曲名 アマゾン