ザッパ作品紹介/ブロードウェイ・ザ・ハード・ウェイ

ザッパ・バンドとしては最後となる、1988年のツアーの中から、政治色の濃いものを集めた作品。このツアーでの録音は、後に『メイク・ア・ジャズ・ノイズ・ヒア』と『ザ・ベスト・バンド・ユー・ネヴァー・ハード・イン・ユア・ライフ』としても発表され、『メイク〜』はインスト中心、『ザ・ベスト〜』はベスト盤的選曲になっている。

ところで、このツアーにはちょっとした背景がある。それは、このツアーは大統領選挙に照準を合わせて行われたものなのだ。

実はアメリカでは日本と異なり、18才以上で「選挙人登録」をしたもののみが、投票権を得られる。そこでザッパは登録手続をセットアップして、このツアーを行った。ショーの真ん中に30分の休憩をとって、オーディエンスに登録手続を呼びかけたそうだ。これは実際、効果があったようで、オーディエンスの10%以上、時には25%の人たちが登録手続をしたとのことだ。

まあ、それはさておき、メンバー面をみてみると、エド・マン(per)とウォルト(tp)、ブルース(tb)のファウラー兄弟が復帰したのがなんとも嬉しい。また、それにプラスして、サックスもアルト、テナー、バリトンと3人いるから豪華だ。1曲、スティングが飛び入り参加して歌ったものもある。(「マーダー・バイ・ナンバーズ」)

内容は、歌もの中心の聴きやすいロック。聴きやすいといっても、決して薄味ではなく、ザッパらしい自由自在な展開で、聴き手を魅了する。ブロードウェイのショーのような仕上がりで、終始エンターテイメント性に溢れている。

また、音質も臨場感豊かで、こんなコンサートに行ってみたいと心底思わせてくれる。

ちなみにツアー時のザッパの記者会見によれば、このツアーはすべて48トラック・デジタル録音をしているから、まさにスタジオ録音したかのように聴こえるだろう、とのことだった。

ザッパの上質なエンターテイメント・センスが結実した極旨ロック。その風情は大人のロックとしての貫禄すら漂う。アメリカン・ミュージックを愛する多くの方に聴いて頂きたい、一家に一枚の名ライブ盤だ。

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ブロードウェイ・ザ・ハード・ウェイの曲名 アマゾン