ザッパ必聴盤5選『フリーク・アウト』

記念すべきデビュー・アルバム。こいつははずせないだろう。わたしにとっては感慨深いアルバムだ。いまでも、はじめて聞いたときのジャスト・フィット感はわすれられない。

第一印象は怪しく豪快。「どーだ」といわんばかりの出だしの「ハングリー・フリークス・ダディ」はいつ聞いても大胆不敵。ザッパのギターはフリーキーだし、途中に出てくる、なにやら変形された声が、秘密結社への忠誠を誓わされているような気分にさせる。もう、すでに、この時点で、美しくゆがんだザッパ・ワールドは、確立されてしまっているのである。そして、当時、流行していたサイケデリック・ロックとは、ひと味もふた味も違う、濃密な何かを感じさせてくれる。

(最後の2曲を除けば)全体的にはロックンロールやR&B、ドゥー・ワップなどがベースになっているから案外聴きやすい。だがどの曲も、ザッパの個性でデフォルメされていて、ルーツ音楽への造詣深さ、ただならぬ解釈力を知ることができる。サウンドは図太く骨太、また、武骨のようで包容感あふれる、レイ・コリンズのリード・ヴォーカルは本当に美しい。

前述の「ハングリー・フリークス・ダディ」のような裏ロックの代表ともいえる曲もあれば、メンバー間ではモータウン・ワルツと呼んでいた、nanigoリズム(nanny goat = うんざりさせられる)が美しい、ドラマティックな6曲目「なんて俺はバカだったんだ」のような、音楽ファンを自認するような人を、満足させるであろう曲もあるし、ただの、若気の至り的ロック・バンドではないことは、明らかだ。

そして、その決定打ともいえるのは、このアルバムについて語るとき、必ずとりあげられる、アナログD面12分に及ぶ「モンスターマグネットのセガレの帰還」だ。現代音楽を新解釈、奇形化させたこの曲(?)は、ザッパの解説によれば、「朝1時のレコーディング・スタジオで、500ドル分の借り物のパーカッションを与えられたフリークスが、好き放題やるとどうなるかという、記録」とのことだが、実に馬鹿力あふれた、ホットな音楽作品となっている。

のちに、洗練を極めるザッパ・ワールドの、狂おしきパッションがつまった原石のような傑作。

素直にセカンド『アブソリュートリー・フリー』、サード『ウィー・アー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マニー』と聞きすすんでいくのが、オススメ。よりマニアックにポップなザッパ・ワールドに、絶対ハマること間違いなし。
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フリークアウトの曲名 アマゾン