ロス・ロボス『Colossal Head』(1996)
たしか、96年の年末かその年明けだったと思うけど、クロスビート誌で年間ベストの特集をやっていた。その特集を見ていたとき、僕は我が目を疑った。なんと、ランキング上位にロス・ロボスの本作がランクインしていたのだ。その時の僕の気持ちと言えば、「んっ、ロス・ロボス! あのラ・バンバの。」ってな具合だった。
ロス・ロボスというバンドはメキシコ系アメリカ人によるロック・バンドで、87年にリッチー・バレンスの伝記映画「ラ・バンバ」の主題歌を歌い全米No1になったので、名前は憶えていた。でも、それ以外は全く知らなかった。たぶん、日本の音楽ファンの大多数はそんな感じだったんじゃないかと僕は想像する。
その主題歌のイメージしかないバンドが、最新ロック情報を扱う雑誌の年間ベストに選ばれているのだから、さぞかし驚いた。それではいったいどんな音楽なのじゃ、っていう感じで気にせずにはいられなかった。プロデューサーはミッチェル・フルーム&チャド・ブレイクで、よく雑誌記事でも名前は目にしていたのでとにかく買ってみた。
96年というとなんといっても話題はベックの『ODELAY』であったけど、聴いたときのインパクトはそれにも負けないものがあった。なにしろ「ラ・バンバ」のイメージを覆す実験的触感なサウンドに、絶対にシングル・カットはできそうにないエキゾチックな1曲目。これは間違いなく傑作に違いないと確信した。
すると2曲目の「Mas Y Mas」は重厚なブラスと攻撃的なギターが炸裂した火の玉ロック。そうかと思うと3曲目は哀愁漂うメキシコ風味なメロディ。「う〜ん、これは買って良かった。」と思わず膝を叩きたいような気持ちになった。
そういえば「大人のロック」という60’s、70’sの洋楽バンドを扱った雑誌があるけど、現代の大人のロックということで言えば、まさに本作の方が大人のロックと言えるんじゃないかな。
とにかく、ルーツ・ミュージック好きには間違いなく目には鱗のハイパー・ミュージックに映るだろう。オススメ。