ジム・オルーク『BAD TIMING』(1997)
さて、ZAPPAHEADZ TV開局第一弾として何を取り上げようかと思ったが、いざ始めようと思ったら案外なににしたら良いか思い悩んでしまった。最近買ったもので気に入ってるものもあるのだけど、そんなに聴き込んでるわけではないから、ちょっと心許ないし。
そこで、少し前のもので(90年代位)何回も聴いたものということでジム・オルークの『BAD TIMING』にすることにした。
ジム・オルークという人はシカゴ音響派の人で、この頃はまだ、デビット・グラッグスと組んでガスター・デル・ソルというエクスペリメンタル・フォーク・ミュージックのユニットをやっていた。ガスター・デル・ソルというのはたぶん当時、かなり先進的な音楽ファンくらいしか聴いてなかったと思う。僕も知らなかった。
そんなマニアックなポジションにいたオルークのギターインスト作品が本作『BAD TIMING』。
ギターインストと聞くと何やら退屈そうと思う人もいるかもしれないけれど、この作品に関してはそんな心配をする必要は全くなし。ギターが主役というだけで、スティール・ギター、ピアノ、フレンチ・ホルン、トランペット、バイオリンなどが程よく彩りを加えていく。
古き良きアメリカ音楽に、オルークがそれ以前に培った音響効果やミニマル・ミュージックの恍惚感などが盛り込まれたユニークな作品だ。
曲数は全4曲で、それぞれが起承転結にあたるといって良いと思う。そう考えるとハイライトはやはり3曲目のタイトル曲といえるだろう。繰り返し反復されるオルゴールみたいな音とギターフレーズを聴いていると、なんだか幽体離脱でもしてるような妙にフワフワしたような気になってくる。
昔のカントリー・ミュージックを主軸にオルークの素養を加えることで、一見どこにでもありそうで、その実どこにもない音楽になっている。そういうわけで本作は僕のお気に入りになっているわけだけど、不満がないわけではない。
4曲目のクライマックスで、それまで添え物役だったバンドが、ドラムも加わり一斉に全面に出てトランペットが鳴りまくるのだけど、これはいかがなものかといつも首を傾げてしまう。急に音がデカくなり、調子っぱずれになってしまうのだ。特にトランペットの音はやたら耳について、これはちょっとガサツな感じする。ここは少し堪えて控えめに作り込んで欲しかった。
とはいえ、最初から最後までリスナーの耳を捕えて離さない「一聴の価値あり」の作品であることに違いはない。