ザッパ作品紹介/クルージング・ウィズ・ルーベン&ザ・ジェッツ

架空のバンド、ルーベン&ザ・ジェッツに扮した、50年代のドゥーワップ/R&Bへのオマージュ・アルバム。後に実際、ルーベン&ザ・ジェッツというバンドが、ザッパのプロデュースでデビューしている。

アルバム通してどの曲も、ポップでウォームで甘味な魅力に満ちていて、たいへん楽しい。古き良きアメリカにタイム・スリップしてしまうかのような作品。とはいっても、もちろん、ザッパ流のデフォルメ感覚は発揮されてて、紛れもなくマザーズの音楽になっている。デビュー作『フリーク・アウト』に収録されていたナンバーのうち、4曲が再演されている。

個人的には初代ヴォーカル、レイ・コリンズの歌声が堪能できるのがなんとも嬉しい。また『フリーク・アウト』収録曲の再演など、デフォルメ感覚を実感できて面白い。ラストを飾る「すき間をふさいで」のエンディングでの、コリンズの歌声や、サックス、ザッパのワウ・ギターなどは哀愁を誘い、このまま終わらないで欲しいと切に願ってしまう。

ザッパの音楽に対する愛情が窺い知れる本作。内容的には楽しい作品だが、ザッパのディスコグラフィーの中では特異なポジションにあるため、最初の1枚には不向きだろう。

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クルージング・ウィズ・ルーベン&ザ・ジェッツの曲名 アマゾン