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ソウル・フラワー・ユニオン『ワタツミ・ヤマツミ』(1994)

2010年9月12日 (日曜日)
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ソウル・フラワー・ユニオン『ワタツミ・ヤマツミ』(1994)このブログを始めた時から、ソウル・フラワー・ユニオンは絶対に取り上げねばならないと思っていたのだが、延び延びになってしまっていた。僕が聴く数少ない日本のバンドで、これはセカンド・アルバム。

これは紛うことなき日本のロックの名作だろう。

こんな事を言うと、おいおい、今お前、日本のバンドは知らないと言ったばかりなのに何を断言しているのだ、と叱られてしまいそうだけど、そんなことは問題にならない。

なぜなら、1曲目の「もののけと遊ぶ庭」を聴いたら、誰だってそう思うに違いないのだから。

日本の土着的なリズムとロック、フリーキーなサックス、それにヴェルヴェット・アンダーグランド的ノイジー・ギター。こんなカッコイイ曲が他にあるだろうか。特に後半のインスト部分のフリーキーな交錯は最高のクライマックス。この曲を聴いて何も感じないなら、ロックを聴くのをやめた方が良いんじゃないかとすら思えてくる。アルバムのど頭から、どっかーんと噛ましてくれたといった感じだ。

2曲目「レプン・カムイ(沖の神様)」も初めて聴いた時、すぐさま心を奪われた。イントロの歪んだギターと笛の音色のコントラストが好きで、ここだけで次の展開はどうなるのだろうと、息をのんでしまう。そして期待を裏切らず、空を舞う天女のような美しいメロディーが流れ込んでくるのだから堪らない。それにコーラスの高揚感は素晴らしく、鳥肌ものだ。この息つく間もないほどの滑らかな展開には、思考停止でただただ感動してしまうこと必定だろう。ちなみに以前、会社の飲み会の後、カラオケで歌ったら凄く珍しがられ、超ウケた(笑)。

「陽炎のくに、鉛のうた」は、大地に杭を打ち込むような重いリズムのイントロが特徴的で、まるで象の集団がドスドス歩いて大地を揺らしてるかのように躍動的だ。それにラテンっぽいピアノや古風なフルート、ギターなどが絡まって、なんとも気高くヘビーな世界を現出している。

「たこあげてまんねん」は本当に凧が風になびかれて飛んでいるかのような曲で、瑞々しく清らかな空模様を感じさせるし、男性バックコーラスは山の麓を連想させる。途中でオルガンジャズに転換するのは意外性に富んでスリリングだ。

「戒厳令下」は歪んだギターに奏でられながら、ずっしりと地を踏みしめるように歌われていくのだが、間奏のピアノとストリングス、ギターの交錯する様は実にスリリングで素晴らしい。

「向日葵の夢」は、海と風を鮮烈にイメージさせる壮大な曲で、ストリングスの描く軌跡が凛として素晴らしい。そして内海洋子の張りのある歌唱が、この曲の凛とした佇まいに最高の躍動感を与えているのだ。僕はこの人の声は凄く好きで、聴くたびに、自分がこのように歌えたらいいなあと思ってしまう。本当に格好良くて、入れ替わってみたいくらいだ。

民謡っぽい曲の「夕立とかくれんぼ」は、郷愁を誘うメロディーで何度聴いても心に沁みる。歌詞の最初に「夕暮れのかくれんぼ」とあるのだけど、まさにそのイメージにぴったり合う土着的なサウンドで、聴いていると堪らなく懐かしい気持ちになってくる。日本人としての魂の奥底に触れてくるとでも言ったら良いだろうか。

「アイヌ・プリ」は土着ロックとファンクが合体したような、人間の持つ生命力の炎を感じさせる曲だ。ファンカデリックの『America Eats Its Young』収録の「Loose Booty」を彷彿とさせる妙ちくりんなフレーズの可笑しさが堪らない。それに和太鼓やギターソロ、そして掛け合いコーラスが凄くカッコイイ。喜納昌吉のカバー曲なのだけど、オリジナルはまだ聴いた事がない。今度聴いてみなくてはね。

「リベラリストに踏絵を」はロック、ファンクがドッキング、和のテイストまでも漂わせたラストを飾るに相応しい長尺な曲。ファンカデリックの『Uncle Jam Wants You』を彷彿とさせるコミカルさや宇宙観すらも漂わせた壮大な音絵巻という面持ちで、物凄いエネルギーが充満している。まるで黄色に染まった銀河の渦の中心で、キン肉バスターをキメてるようなファンキーな爆発力を放ってるのだ。個人的に超お気に入りで、超センス良いと思う。奇跡的とさえ言える曲だ。

それにしても本作は、民謡、ロック、ファンク、お囃子と様々な異質な要素が絶妙に融合された傑作。そう、まさに“絶妙”なのだ。この言葉がこれほど似合う作品はそうそうないだろう。

そして、アルバム・タイトルの『ワタツミ・ヤマツミ』。これは、“海の神・山の神”という意味なのだが、まさに、そのイメージに相応しい大自然のような逞しさと、人間の魂の奥底から沸き上がる神々しい程の生命力に溢れ満ちた音楽作品になっている。これは後世まで語られるべき名作であろう。

ソウル・フラワー・ユニオンは他のアルバムも凄く良いし、こんなバンドは他にどこにもいないと思ってる程だから、またブログで書いてみたいね。

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この投稿は 2010年9月12日 日曜日 4:20 PM に ロック/ポップ全般, 日本のバンド カテゴリーに公開されました。 この投稿へのコメントは RSS 2.0 フィードで購読することができます。 コメントを残すか、ご自分のサイトからトラックバックすることができます。

コメント / トラックバック2件

  1. たくま より:

    こちらでは初めてコメントさせて頂きます。

    ZAPPAHEADZさんの
    巧みで的を得たこの素晴らしい楽曲表現を読んで
    一人でも多くの「在日猿人類」が
    この日本ロック史に燦然と輝く名作に触れる事を
    心から願うばかりです。

  2. zappaheadz より:

    たくまさん

    いらっしゃいませ。
    どうぞお越し下さいました。

    ホントに名作ですよね。(もちろん他作品も素晴らしいですが)
    また、気が向いたら、他作品の感想も書いてみます。

    ソウル・フラワーは日本の宝です!
    ウオー!

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